そんな状態のまま、情報だけを集めている方もいるのではないでしょうか。先に、この記事の結論をお伝えします。

そのうえで不要な工程をなくし、簡単にできるものを簡単にしてから、その作業に合う方法を選びます。この記事では、その手順を5つのステップに分けて、注文受付という1つの業務を例に最後まで通します。

なぜツール選びから
始めない方がいいのか

自動化を考え始めると、最初に出てくるのは手段の名前です。AI、RPA、ノーコードツール、自動化サービス。

どれも便利な手段ですが、手段から先に考えると、自分の仕事に合っているかどうかを判断できません。

「RPAを入れたい」と考えても、対象の作業がフォームで受け取れる情報だけで完結するなら、RPAを使わずに解決できます。反対に、毎回内容が少しずつ変わる文章を書く作業なら、決まった操作を繰り返す仕組みだけでは足りません。

何を自動化するか 何を使って自動化するか

先に決めるのは「何を自動化するか」で、「何を使うか」は後から決めます。作業の中身が分かっていれば、選べる方法は自然に絞られます。

作業を1つ選ぶ、作業を分解する、なくす・簡単にする、方法を選ぶ、小さく試すという繰り返し作業を自動化する5ステップの流れ
図1|繰り返し作業を自動化する5ステップの全体像

ここからは、この5ステップを「注文メールを受注表へ転記する作業」という1つの業務にあてはめながら、順番に見ていきます。

ステップ1|
自動化する作業を1つ選ぶ

最初にやることは、ツールを探すことではありません。「また同じことをやっている」と感じる仕事を、1つだけ選びます。

最初の1つは、この4点で選ぶ

  • 頻度が高い
  • 手順が決まっている
  • 人の判断が少ない
  • 問題が起きても人が確認して戻せる

特に4つ目が大切です。重要な契約の判断や金額の最終確定のように、間違いを戻しにくい仕事は、最初の候補には向きません。扱わないという意味ではなく、順番として後に回します。

ここでは1つだけ選びます。複数を同時に進めると、どこで問題が起きたのか分からなくなります。候補そのものをもっと見たい場合は、自動化できる業務15選で具体例から探せます。

ステップ2|
作業を4つの要素に分解する

選んだ作業を、次の4つに分けて書き出します。ここが5ステップの中心です。

要素 確認すること
きっかけ 何が起きると作業が始まる?
処理 具体的に何をしている?
完成形 何ができれば終わり?
判断 どこで人が考える?

例:注文メールを受注表へ転記する

先ほど選んだ作業を、実際に分解すると次のようになります。

注文メールの受信をきっかけに、氏名・商品・数量を取り出して受注表へ登録し、受付メールを送るまでの流れと、在庫不足・入力不足・特別要望は人が確認する分岐
図2|1つの業務を「きっかけ・処理・完成形・判断」へ分解する

ここまで書き出すと、毎回同じ部分と、そのつど考えている部分が分かれます。受注表への入力や受付メールの送信は毎回ほぼ同じで、在庫不足や特別な要望への対応だけが判断です。

自動化設計シートで
書き出してみる

4つの要素に慣れてきたら、次の項目まで書き出しておくと、方法を選ぶときに迷いにくくなります。紙でも、Excelやスプレッドシートでも構いません。

全部が埋まらなくても大丈夫です。書けない場所が、まだ決まっていない工程です。

項目 書く内容
作業名 何を繰り返している?
頻度 毎日・毎週・毎月?
きっかけ 何が起きると始まる?
入力情報 何の情報を使う?
処理 具体的に何をしている?
完成形 何ができれば終了?
人の判断 どこで人が考える?
例外 普段と違うケースは?
確認 最後に誰が何を見る?

ステップ3|自動化の前に
「なくす・簡単にする」

分解できたら、すぐにツールを探したくなります。その前に確認することが1つあります。その工程は、そもそも必要でしょうか。

まず「なくせないか」を考える

次のような工程は、なくせる場合があります。

  • 使っていない記録
  • 同じ内容の二重入力
  • 慣習だけで続けている確認
  • 複数の場所への重複保存

不要な工程をそのまま自動化すると、不要な作業を速く繰り返す仕組みができてしまいます。

次に「簡単にできないか」を考える

注文メールの例で見てみます。メールの書き方は人によって違うため、「読む」「必要項目を探す」に手間がかかります。そこで、受け取り方そのものを変えます。

注文メールを開いて必要項目を探しExcelへ手入力していた5工程が、注文フォームで受けて自動で受注表へ記録し必要なときだけ確認する3工程に変わる比較図
図3|入力を速くするのではなく、入力そのものをなくす

氏名・商品・数量が最初から項目ごとに分かれていれば、読み取る工程が減ります。仕事の入口を整えるだけで、作業そのものが小さくなります。

紙・PDF・フォームなど、入力そのものを減らす具体的な方法はデータ入力を自動化する5つの方法で扱っています。工程を整える順番そのものは中小企業の業務効率化は何から始める?も参考になります。

ステップ4|
一番シンプルな方法を選ぶ

ここでようやく、方法を選びます。代表的な選択肢は6つです。

方法 例 向いている処理
今ある機能 定型文、表計算の関数、通知 単純な定型作業
既製ツール フォーム、予約、会計 よくある業務
ノーコード連携 サービス間の連携 転記・通知・記録
AI 下書き、要約、分類、回答案 内容が毎回少し変わる処理
RPA PC上の定型操作 他の方法で連携しにくい操作
スクリプト・専用ツール 独自処理 既製サービスでは合わない業務

この表は優劣のランキングではありません。下にあるほど高度、という意味でもありません。見る順番は1つだけです。

毎回同じ文面のメールを送っているだけなら定型文の登録で足りますし、フォームの回答を表へ記録したいだけなら標準機能で完結することもあります。まず、いま使っているツールの機能から確認してください。

そのうえで実際のサービスを比べたくなったら、小さな会社の業務効率化ツール早見表で、面倒な仕事から逆引きで選べます。

ステップ5|小さく試し、
例外は人が確認する

方法を決めたら、いきなり全部を置き換えません。一番小さい範囲だけを動かし、問題がなければ1段ずつ広げます。

最初から全部作らず、1段ずつ広げる
最初に作る

フォームで受け付けて、受注表へ記録するところまで

広げる順番
  1. フェーズ 1受付受注表へ記録する記録された内容が正しいかを見る
  2. フェーズ 2返信受付メールを送る文面と送信先を確かめてから足す
  3. フェーズ 3通知担当者へ知らせる最後に通知を足して完成

最初から4工程をまとめて作ると、うまく動かなかったときに原因を探しにくくなります。

例外が起きたときの動きも決めておく

自動化でつまずきやすいのは、正常なときの流れではありません。普段と違うことが起きたときです。先に次の取り決めを作っておきます。

特に大切なのは、エラーのときにそのまま処理を続けないことです。間違ったデータを登録し続けるより、止めて知らせる方が、後の手直しが少なくなります。

目指しているのは「人が何も見なくなること」ではありません。毎回同じ作業を仕組みに任せ、人は確認と判断に集中することです。

自動化しない方がよい
仕事もある

すべての繰り返し作業を自動化する必要はありません。次のような仕事は、無理に仕組み化しない方がよい場合があります。

  • 人の判断が結果を大きく左右する
  • 例外が多く、毎回条件が変わる
  • 発生頻度が低く、作る手間の方が大きい
  • 失敗したときの影響が大きい

その仕事が自動化に向いているかどうかの判定基準は、定型業務とは?自動化しやすい仕事・向かない仕事で詳しく解説しています。

繰り返し作業の自動化で
よくある失敗

うまくいかないときは、たいてい次のどれかが起きています。

  • 01ツールを先に決める

    使いたい手段から入ると、作業の中身に合わない方法を選びやすくなります。先に決めるのは、何を自動化するかです。

  • 02最初から全部を自動化する

    工程をまとめて置き換えると、問題が起きたときにどこが原因か分からなくなります。1工程ずつ広げます。

  • 03例外を考えていない

    普段と違うデータが来たときの動きを決めていないと、間違ったまま処理が進みます。止めて知らせる形を用意します。

  • 04作った人しか分からない

    設定の内容や条件が共有されていないと、担当者が変わったときに直せません。設計シートを残しておきます。

一人で仕事を回している場合の考え方は、個人事業主の業務効率化アイデア15選もあわせて参考にしてみてください。

よくある質問

プログラミングの知識がなくても自動化できますか?

必ずしも必要ではありません。

いま使っているメールソフトや表計算ソフトの機能、フォーム、既製の業務ツールだけで解決できる作業もあります。

一方、自社特有の条件が多い場合や、複数のシステムをつなぐ場合は、専門的な知識が必要になることもあります。

まずは、いま使っている機能で解決できないかを確認してから、複雑な方法を検討するとよいでしょう。

RPA・ノーコード・AIはどう使い分けますか?

処理の性質によって変わります。

目安は、ノーコード連携がサービス間の転記・通知・記録、RPAが他の方法で連携しにくいPC上の定型操作、AIが内容の変わる文章の下書きや分類です。

ただし、どれを使うかを先に決める必要はありません。

作業を分解したあとで、一番シンプルに実現できる方法を選びます。

自動化にはどのくらい費用がかかりますか?

選ぶ方法によって大きく変わります。

いま契約しているサービスの標準機能を使う場合、追加費用が発生しないこともあります。

一方、専用ツールの導入や独自開発を行う場合は、初期費用や月額費用が必要になります。

具体的な金額は、対象の作業・利用中のサービス・必要な連携先によって変わるため、一律には示せません。

まず追加費用のかからない方法で試し、必要になった段階で有料の方法を検討する進め方があります。

一部だけ自動化しても意味がありますか?

意味があります。

多くの仕事は、定型的な工程と、人が判断する工程が混ざっています。

そのため、丸ごと置き換えるより、毎回同じ部分だけを切り出す方が現実的です。

転記や記録のような工程を仕組みに任せられれば、その分、確認や判断に時間を使えるようになります。

自動化したあとも人の確認は必要ですか?

作業によります。

金額の確定、顧客への正式な連絡、発注や契約など、間違えたときの影響が大きい処理では、人の確認を残した方がよいケースがあります。

また、例外やエラーが起きたときに気づける形になっているかも確認しておきます。

確認をなくすことより、確認しやすくすることを目指す方が、無理なく続けられます。

まとめ|最新ツールより、
シンプルに減らすこと

繰り返し作業の自動化は、次の5ステップで進めます。

  1. 繰り返している作業を1つ選ぶ
  2. きっかけ・処理・完成形・判断へ分解する
  3. なくす・簡単にする
  4. 一番シンプルな方法を選ぶ
  5. 小さく試し、例外は人が確認する

大切なのは順番です。ツールを選ぶ前に何を自動化するかを決め、自動化する前にその作業をなくせないか、簡単にできないかを考えます。

書き出した作業に合う方法を具体的に選ぶときは、小さな会社の業務効率化ツール早見表が使えます。