どれも、すでにどこかにある情報を人がもう一度打ち直している作業です。データ入力の自動化と聞くとOCRやRPAのような道具を思い浮かべるかもしれませんが、先に考えることは別にあります。

この記事では、紙・PDF・メール・フォームなどの「入力元」ごとに、どの方法で手入力を減らせるかを整理します。読み終えたときに、自分の作業をどの方法で減らすかが決まっている状態を目指します。

データ入力は「入力元」で
自動化方法を選ぶ

同じ「データ入力」でも、紙を見ながら打ち込んでいるのか、すでにデータがある一覧を打ち直しているのかで、必要な方法はまったく変わります。ツール名から選ぶと、ここがずれます。

先に見るのは入力元です。入力元が決まれば、受け取り方とデータ化の方法も決まります。

紙帳票・PDF・メール・Webフォーム・他システムという入力元から、フォーム・CSV・OCR・連携・RPAでデータ化し、Excelや業務システムへ保存・活用するまでの全体像
図1|データ入力自動化の全体像

流れは3つです。入力元から受け取る、使える形にデータ化する、業務で保存・活用する。5つの方法は、このうち「データ化する」をどうやるかの違いです。

全部を機械に任せる必要はありません。ここが整うと、人の役割は入力作業から確認作業へ変わります。

手入力が発生するのはどこ?
まず入力経路を確認する

手入力は、たいてい決まった入口から発生しています。自分の作業がどこに当てはまるかを探してください。

入力元 よくある作業 まず検討する方法
紙の帳票・申込書 紙を見ながらExcelへ打ち込む フォーム化(方法1)/残る紙はOCR(方法3)
PDFの注文書・請求書 PDFの数字をコピーして貼る CSV取込(方法2)/難しければOCR(方法3)
メール本文 本文の内容を管理表へ転記する 受付をフォームへ(方法1)
Webフォームの回答 届いた内容を別の表へ入れ直す 自動記録(方法1)/サービス連携(方法4)
他システム・他サービス 同じ内容を2か所へ入力する CSV取込(方法2)/サービス連携(方法4)

複数当てはまっても、同時に手をつける必要はありません。回数がいちばん多い経路を1つだけ選んでください。

データ入力を
自動化する5つの方法

先に、5つの方法を見比べてください。

フォーム・CSV・OCR・連携・RPAの5つの方法を、向く入力元と向くケースで並べて比べた早見表
図2|5つの方法の早見表

フォームとCSVは、今使っているサービスの機能だけで始められることが多い方法です。OCRと連携はひと手間かかり、RPAは他が使えないときの選択肢になります。

迷ったら「フォーム → CSV / OCR → 連携 → RPA」の順に考えます。以降で、1つずつ具体的に見ていきます。

方法1|フォームで
最初からデータ化する

これから新しく集める情報なら、入力の入口をフォームに変えます。紙を作らず、相手に入力してもらい、その回答をそのまま一覧として保存します。

項目を用意し、フォームで入力してもらい、回答を一覧で保存して、確認してから業務に使うまでの4ステップ
図3|フォームで最初からデータ化する流れ

これで減るのは、「入力する人」と「そのデータを使う人」の間の転記です。申込・注文・アンケート・予約などは、Googleフォームのようなサービスで回答を一覧化できます。新しいシステムを作らなくても、無料で使える範囲から試せます。

紙での受付をすぐには廃止できない場合も、すべてを一度に切り替える必要はありません。一部の受付だけフォームへ移す進め方もあります。

フォームで受けた内容を記録・振り分け・返信まで含めて運用したい場合は、問い合わせ対応の自動化で受付から通知までの流れを解説しています。

方法2|CSVで
まとめて取り込む

すでにデータとして出力できるものは、1件ずつコピーしません。CSVで書き出して、まとめて取り込みます。CSVは、表形式のデータを受け渡すときに使うファイル形式です。

ECサイトや予約サービスからデータを出力してCSVを書き出し、ExcelやSheetsへ取り込んで確認して使うまでの流れと、1件ずつコピーする場合との比較
図4|CSVでまとめて取り込む流れ

EC・予約・顧客管理などのサービスは、注文や予約の一覧をCSVで書き出せることが多いです。20件を20回コピーしていた作業が、1回の取り込みで済みます。

手入力を始める前に、次の2つを確認してください。

  1. 元のサービスからCSVで書き出せないか
  2. 入力先のシステムやExcelに取込(インポート)機能がないか

自動化ツールを足す前に、今使っているサービスの機能を確認する。これだけで手入力が消えることもあります。

なお、取り込んだあとにExcelの中で転記・集計する作業は別のテーマです。関数・Power Query・VBAの使い分けはExcelの転記作業を自動化する方法で扱っています。

方法3|紙帳票・PDFは
OCRで読み取る

紙やスキャンPDFでしか受け取れない書類は、OCRで文字と数字を読み取ります。OCRは、紙をスキャンした画像などから文字を読み取り、データとして扱える形へ変換する技術です。AIで読み取りを補助する「AI-OCR」と呼ばれるサービスもあります。

紙帳票・レシート・PDFを見ながら1件ずつ入力していた作業を、OCRで読み取って表データにし、人が確認して誤読を直し会計ソフトへ渡す流れへ変える図
図5|紙帳票・PDFをOCRで読み取る流れ

ここで大事なのは、OCRは「完全自動」ではないことです。OCRを入れると、入力作業が「読み取り+確認」に変わります。ゼロにはなりませんが、人が全部打ち込む状態からは確実に軽くなります。

向いているのは、紙やPDFをすぐにはなくせない業務です。逆に、紙で受け取る必要がないなら、OCRより先に方法1のフォーム化を検討します。

領収書や請求書の読み取りを経理の流れに組み込みたい場合は、個人事業主の経理を楽にする方法で保存先の決め方から会計ソフトへの渡し方まで整理しています。

方法5|RPAは他の方法が
使えないときに検討する

RPAは、人がパソコンの画面でしている操作をそのまま代行する方法です。強力ですが、最後に検討します。順番は次のとおりです。

  1. フォームにして、最初からデータで受け取れないか
  2. CSVで書き出して、まとめて取り込めないか
  3. 紙やPDFをOCRで読み取れないか
  4. サービス同士を連携できないか
  5. それでも画面操作しか方法がないなら、RPAを検討する

RPAは対象システムの画面が変わると止まります。動かなくなったときに直せる人がいるか、設定・確認・修正にかかる手間まで含めて判断してください。件数が少ないなら、手入力を残した方が結果的に軽い場合もあります。

どの方法を選ぶ?
入力元から判断するフロー

判断は、上から順に見るだけです。

新しく集める情報ならフォーム、データで出力できるならCSVか連携、紙やPDFならOCR、画面操作しかないならRPAへ進む判断フロー
図7|どの方法を選ぶか判断するフロー

具体例|手入力は
こう変えられる

よくある3つの経路で、何がどう変わるかを見てみます。

ケース1:紙の注文書を
Excelへ打ち込んでいる

OCRで「読み取り+確認」へ変える
今

紙を見ながら1件ずつExcelへ入力し、あとで入力内容を確認する

見直し後
  1. STEP 1OCR紙帳票を読み取る注文書をまとめてスキャン
  2. STEP 2自動表データになる日付・取引先・金額が並ぶ
  3. STEP 3人金額と日付を確認誤読だけ直して確定する

紙をなくせるなら方法1のフォーム化へ、紙が残るなら方法3のOCRへ進みます。

ケース2:問い合わせを
管理表へ入れ直している

フォームで最初からデータにする
今

届いたメールを読んで管理表へ入力する

見直し後
  1. STEP 1フォーム入力してもらう必要な項目を先に決めておく
  2. STEP 2自動回答が一覧へ記録転記しなくてもデータで残る
  3. STEP 3人内容を見て対応する入力ではなく判断だけが残る

すでにデータで届いているなら、もう一度入力する必要はありません。

ケース3:予約データを
管理表へ転記している

CSV・連携でまとめて受け取る
今

予約サービスの画面を見て、1件ずつコピーして貼り付ける

見直し後
  1. STEP 1CSV・連携一覧で書き出す予約データをまとめて出す
  2. STEP 2自動管理表へ反映する1回の取り込みで全件そろう
  3. STEP 3人内容を確認する件数と日付だけ見る

1件ずつコピーしていた作業が、1回の取り込みに変わります。

データ入力自動化で
失敗しやすいこと

うまくいかないときは、たいてい次のどれかが起きています。

  • 01最初からRPAで解決しようとする

    いちばん維持が難しい方法を最初に選ぶことになります。フォーム・CSV・OCR・連携を先に確認してください。

  • 02OCRの結果を確認せずに使う

    金額や日付の誤読がそのまま後工程へ流れます。重要な項目だけでも人が見る手順を残します。

  • 03元データを整えずに自動化する

    項目名や表記がそろっていないと、取り込んだあとの手直しが増えます。先に項目を整えます。

  • 04例外処理を考えていない

    崩れた書式まで無理に自動処理せず、通常だけ自動化して例外は人へ回します。

  • 05Excelへの二重入力が残っている

    自動化した先で、結局もう一度打ち直していないか確認します。ここが残ると時間は戻りません。

  • 06ツールを増やしすぎる

    管理する対象が増えると、減らした時間を維持の手間で使い切ります。1つの経路につき1つの方法で足ります。

浮く時間だけでなく、設定・確認・修正・保守の手間まで含めて判断してください。

よくある質問

データ入力は完全に自動化できますか?

業務によります。

項目や書式が安定している入力は自動化しやすい傾向がありますが、完全自動化を前提にする必要はありません。

「人がすべて入力する」状態から「人は結果を確認する」状態へ変えるだけでも、入力作業を減らせます。

紙の書類も自動で入力できますか?

OCRが選択肢になります。

ただし手書き文字や書式のバラつき、スキャンの状態によって読み取り結果は変わるため、人の確認を残してください。

紙で受け取る必要がない業務なら、OCRを導入する前にフォームへ入口を変えられないかを確認する方が先です。

PDFならすべて自動で読み取れますか?

PDFには、文字データを含むものと、紙をスキャンした画像として保存されているものがあります。

文字データを含むPDFはそのまま取り出せることがあり、画像PDFはOCRが必要です。

まず、自社に届くPDFがどちらなのかを確認してください。

Excelへの転記や集計も自動化できますか?

できます。

ただしExcel内で転記・加工する作業は、この記事のテーマである「入力そのものを発生させない」とは別の話です。

先に入力経路を見直し、そのうえで残ったExcel作業を個別に自動化すると整理しやすくなります。

件数が少ない小さな会社でも、自動化する意味はありますか?

会社の規模だけで決める必要はありません。

見るのは、どれくらい繰り返しているか、どれくらい負担になっているか、ミスが起きたときの影響、手順がどれくらい安定しているかです。

1日10分の入力でも20営業日なら月200分になります。一方で年に数回しか発生しない作業は、設定や維持にかかる時間の方が大きくなることもあります。

まとめ|まず1つの
入力経路から手入力を減らす

データ入力の自動化は、入力を速くするより、入力し直さない経路を作ることです。

方法は入力元で決まります。そして、すべてを自動化する必要はありません。次にやることは1つだけです。

方法が決まったら、次は道具選びです。小さな会社の業務効率化ツール早見表で、面倒な仕事から逆引きで比較できます。