先に、この記事の結論をお伝えします。

この記事では、紙・PDF・フォームなどから発生する手入力を減らす方法を5つに整理します。OCRや自動化ツールだけでなく、「そもそも入力しない仕組みに変える」方法から順番に紹介します。

入力元別・解決方法の早見表

まず、いま自分がどこから入力しているかで、最初に確認することが変わります。自分に近いものを探してください。

入力元 まず確認すること 向いている方法
紙の申込書・伝票から入力している そもそも最初からフォームで受け付けられないか フォーム化(方法1)/残る紙はOCR(方法3)
PDFの注文書・請求書から入力している 相手からCSVなどのデータ形式でもらえないか CSV取込(方法2)/OCR・データ抽出(方法3)
Webフォームの内容を別の表へ入れ直している フォームの自動記録機能を使えていないか 自動記録(方法1)/アプリ連携(方法4)
CSVファイルを見ながら手で打ち直している 入力先にインポート(取込)機能がないか CSV取込(方法2)
別システムへ同じ内容を二重入力している 2つのシステムに連携機能がないか アプリ連携・RPA(方法4)/小さな専用ツール(方法5)

データ入力は「速く入力する」より「入力しない」方がラク

具体的な方法に入る前に、この記事の軸となる考え方を1つだけ共有します。

たとえば、注文を紙で受け取ってExcelへ手入力しているとします。このとき「入力を速くする方法」を探す前に、「注文をフォームで受け付けて、自動で記録される流れに変えられないか」を考えてみます。

入口を変えられれば、入力という作業自体をなくせる場合があります。そうなれば、後からOCRで読み取る必要もありません。

大切なのは、人の入力速度を上げることではなく、人が入力する回数を減らすことです。

以下で5つの方法を紹介しますが、すべてを順番に試す必要はありません。入力元によって適した方法は異なります。

まず、

入力そのものをなくせないか

次に、

今使っているサービスの機能だけで取り込めないか

を確認します。

それでも手作業が残る場合に、OCR・アプリ連携・RPA・小さな専用ツールなどを検討します。

データ入力を自動化する5つの方法

方法1:入力フォームにして、最初からデータで受け取る

まず検討したいのが、入力の入口そのものを変える方法です。

紙や口頭、メール本文で受け取ってから人が入力するのではなく、相手に入力してもらい、その内容をそのままデータとして保存する形に変えます。

申込・注文・アンケート・予約などは、Googleフォームなどのフォームサービスを使うことで、回答を一覧として記録できます。

新しいシステムを開発しなくても、すでに利用しているサービスや無料で利用できる範囲から始められる場合があります。

向いている場合

申込・注文・予約など、相手から情報を受け取ったあとに手入力が発生している仕事。

向かない場合

相手がフォーム入力を利用しにくい場合や、紙での受付が必要な業務。

その場合も、すべてを一度に切り替える必要はありません。一部の受付だけフォームへ切り替える方法もあります。

方法2:CSV・インポート機能でまとめて取り込む

1件ずつ手で入力しているものの、元データがすでにデジタルで存在しているケースがあります。

CSVとは、表形式のデータを受け渡すときによく使われるファイル形式の1つです。Excelなどで開けるほか、多くの業務システムでデータの入出力に使われています。

新しい自動化ツールを追加する前に、次の点を確認します。

  1. 元のシステムやサービスからCSVで書き出せないか
  2. 入力先のシステムにCSVの取込機能がないか
  3. Excelやスプレッドシートへ直接取り込めないか
  4. 両方のサービスに標準の連携機能がないか

手入力を始める前に、元のサービスにCSV出力やデータ取込の機能がないか確認する価値があります。

自動化ツールを足す前に、今使っているサービスの機能を確認する。

これだけで手入力を減らせることもあります。

向いている場合

元データがすでに別のシステムやサービスに存在している仕事。

向かない場合

元データが紙や画像だけの場合。その場合は方法3を検討します。

方法3:紙・PDFはOCRで文字や数字を読み取る

どうしても紙やPDFで受け取る必要がある場合は、OCRが選択肢になります。

OCRとは、紙をスキャンした画像などから文字を読み取り、データとして扱える形へ変換する技術です。

AIを使って読み取りを補助する「AI-OCR」と呼ばれるサービスもあり、請求書や領収書などの読み取り機能を備えた業務サービスもあります。

ただし、重要な注意があります。

OCRを使えば100%正しく入力できる、と考えないことです。

手書き文字、書式の違い、かすれ、傾き、画像の状態などによって読み取り間違いが起こる可能性があります。

特に、

  • 金額
  • 数量
  • 顧客情報
  • 契約情報

など、間違えたときの影響が大きい項目は、人の確認を残す方が安全です。

それでも、

人がすべて入力する

状態から、

OCRが読み取り、人は結果を確認する

状態へ変えられれば、入力作業そのものを減らせる可能性があります。

全部を自動化するのではなく、人が担当する範囲を減らすことも自動化の1つです。

向いている場合

紙やスキャンPDFでしか受け取れない書類を継続的に処理している仕事。

向かない場合

処理件数が少なく、自動化の設定や確認にかかる手間の方が大きくなる場合。

方法4:アプリ連携やRPAで入力作業をつなぐ

「フォームに入った内容を顧客管理表にも入れる」

「表にデータが追加されたら担当者へ通知する」

このように、決まった場所から決まった場所へ、同じルールで情報を移しているなら、サービス同士を連携できる可能性があります。

代表的な方法には、Zapier、Make、Power Automateなどの連携サービスがあります。

また、連携機能を持たないシステムでは、パソコン上の決まった操作を自動化するRPAが使われることもあります。

ここで重要なのは、製品名を覚えることではありません。

確認したいのは、

「AからBへ、毎回ほぼ同じルールで情報を移しているか?」

という点です。

YESなら、自動化を検討しやすい仕事です。

反対に、入力するたびに人の判断が大きく変わる仕事は、単純な連携では対応しにくくなります。

向いている場合

二重入力、通知、記録の転送など、手順とルールがある程度決まっている仕事。

向かない場合

入力する内容や処理方法が毎回大きく変わる仕事。

RPAは対象システムの画面変更などによって動かなくなる場合もあります。作業量が少ない場合は、自動化を維持する手間まで含めて判断することが大切です。

方法5:必要な1か所だけ、小さな専用ツールで自動化する

最後は、既製ツールではうまく埋まらない「小さな隙間」を自動化する方法です。

たとえば、

PDFから必要な3項目だけ取り出して、決まった表へ追加したい。

このように、必要な処理は小さいのに、既製サービスでは機能が多すぎたり、自社の手順と少しだけ合わなかったりすることがあります。

こうした場合は、簡単なスクリプトや目的を1つに絞った小型ツールで対応できることがあります。

考え方は、大きな業務システムを新しく作ることではありません。

「毎日の面倒な1か所だけを仕組みにする」

という発想です。

向いている場合

自社特有のルールがあり、既製ツールや標準機能だけでは手入力が残る仕事。

向かない場合

フォーム、CSV取込、OCR、標準連携などで十分に解決できる仕事。

方法1〜4で解決できるのであれば、まずそちらを使う方がシンプルです。

5つの方法を選び直すときの目安

以下は絶対的な基準ではありません。自社の入力元や利用中のサービスによって条件は変わります。

方法 向いているケース 導入前に確認したいこと 人の確認
1. フォーム化 入力の入口を変えられる 相手がフォームを利用できるか 少ない
2. CSV取込 元データがデジタルで存在する 入出力機能があるか 少ない
3. OCR 紙・PDFしか選べない 書式・読み取り精度を確認できるか 必要
4. 連携・RPA 決まった入力を繰り返している サービス同士を接続できるか、変更時に維持できるか ケース次第
5. 小型ツール 独自ルールの隙間がある 誰が保守・確認するか 設計次第

どの入力作業から自動化すればいい?

複数の入力作業がある場合は、次のような特徴を持つものから検討すると進めやすくなります。

  1. 回数が多い
    毎日・毎週のように繰り返し発生している
  2. 入力項目が決まっている
    毎回ほぼ同じ項目を埋めている
  3. 元データの形式が安定している
    書類やデータの形が毎回大きく変わらない
  4. 判断が少ない
    内容を考えるというより、決まった場所へ写している

反対に、

  • 毎回書式が大きく違う
  • 高度な判断が必要
  • 年に数回しか発生しない
  • 間違いが起きたときの影響が非常に大きい

といった仕事は、後回しにするか、人による確認を厚く残して慎重に進めます。

紙・PDF・フォームなどの入力元からデータを整理し、人が確認するまでの自動化フロー

想定例:3つの入力作業はこう変わる

実際の流れをイメージできるよう、よくある状況を想定した例を3つ紹介します。

例1:紙の申込書 → Excelへ手入力

現在

紙の申込書 Excelへ手入力 入力内容を確認

見直し後

フォーム化できないか確認 紙が必要なものだけ残す 必要に応じてOCRで読み取る 人が結果を確認

入口をフォームへ変えられれば、入力作業そのものを減らせます。

例2:PDF注文書 → 管理表へ転記

現在

PDF注文書 内容を確認 管理表へ手入力

見直し後

CSVなどのデータでもらえないか確認 難しい場合はPDFから必要項目を抽出 人が内容を確認 管理表へ反映

最初からOCRありきではなく、元データを別形式でもらえないか確認するのが先です。

例3:Webフォーム → メールを見てExcelへ入力

現在

フォーム送信 メールを確認 Excelへ入力

見直し後

フォーム送信 自動で一覧へ記録 必要なときだけ担当者へ通知

すでにデータとして受け取っているなら、人がもう一度入力する必要がない場合があります。

3つの例に共通するのは、人がすべて入力する状態から、人が必要な部分だけ確認する状態へ変えていることです。

自動化するときに注意したいこと

入力ミスがゼロになるとは限らない

特にOCRでは読み取り間違いが起こる可能性があります。

金額・数量・顧客情報など、間違えたときの影響が大きい項目は、人による確認を残してください。

個人情報を扱うサービスは事前に確認する

顧客情報や請求データを外部サービスで扱う場合は、

  • どの事業者がデータを扱うのか
  • データがどのように保存・利用されるのか
  • 社内外の誰がアクセスできる設定になっているのか

を確認してから利用します。

便利だからという理由だけで、個人情報や機密情報を外部サービスへ渡さないことが重要です。

例外処理は人に残す

書式が崩れた書類や特殊な注文まで無理に自動処理しようとすると、仕組みが複雑になりやすくなります。

通常の処理だけ自動化し、例外が起きたら人へ通知して止める設計も有効です。

自動化の管理そのものを増やさない

短時間の入力作業をなくすために、複雑で維持が難しい仕組みを作ってしまっては本末転倒です。

自動化する時間だけではなく、

設定・確認・修正・保守に必要な手間

まで含めて判断してください。

シンプルな方法で十分なら、それが最適な場合もあります。

まず1つの入力作業だけで試す

最後に、今日からできる進め方です。

全部の入力作業を一度に自動化する必要はありません。

  1. 今日手入力した仕事を1つ選ぶ
  2. 「どこから」「どこへ」入力したかを書き出す
  3. 元データがすでにデジタルで存在しないか確認する
  4. 入力先にCSV取込や標準の連携機能がないか確認する
  5. それでも残る手入力にOCR・連携・小型ツールなどを検討する

特に3と4は、新しいツールを契約する前に確認したいポイントです。

今ある仕組みだけで解決できるのであれば、新しいツールを増やす必要はありません。

よくある質問

データ入力は完全に自動化できますか?

業務によります。

項目や書式が安定している入力は自動化しやすい傾向がありますが、完全自動化を前提にする必要はありません。

「人がすべて入力する」状態から「人は結果を確認する」状態へ変えるだけでも、入力作業を減らせる可能性があります。

紙の書類も自動で入力できますか?

OCRが選択肢になります。

ただし、手書き文字や書式のバラつき、スキャン状態などによって読み取り結果は変わります。

そのため、人の確認を残すことが重要です。

また、紙で受け取る必要がない業務であれば、OCRを導入する前にフォームなどへ入口を変更できないか確認してみてください。

PDFならすべて自動で読み取れますか?

PDFには、文字データを含むものと、紙をスキャンした画像として保存されているものがあります。

文字データを含むPDFと画像PDFでは、取り出し方が異なります。

まず、自社に届くPDFがどのような形式なのかを確認することから始めてください。

Excelへの転記や集計も自動化できますか?

可能です。

ただし、すでに存在するデータをExcel内で転記・加工する作業は、「入力そのものを発生させない」というこの記事のテーマとは少し異なります。

まずは、そもそも手入力を発生させずに済まないかを確認し、そのうえで残ったExcel作業を個別に見直すと整理しやすくなります。

件数が少ない小さな会社でも、自動化する意味はありますか?

会社の規模だけで決める必要はありません。

確認したいのは、

  • どれくらい繰り返しているか
  • どれくらい負担になっているか
  • ミスが起きたときの影響
  • 手順がどれくらい安定しているか

です。

たとえば1日10分の入力作業でも、20営業日なら月200分です。

一方で、年に数回しか発生しない作業なら、自動化の設定や維持にかかる時間の方が大きくなる場合もあります。

「自動化できるか」だけではなく、「自動化する価値があるか」も一緒に考えてください。

まとめ:「入力を速くする」のではなく「入力をなくす」

データ入力を減らすときは、いきなりOCRやRPAから考える必要はありません。

まず、

入力そのものをなくせないか

を確認します。

次に、

CSV取込や標準連携など、今ある機能だけで解決できないか

を確認します。

それでも残る手入力に対して、

OCR・アプリ連携・RPA・小さな専用ツール

などを必要な範囲だけ使います。

紙、PDF、フォーム、CSV、別システムでは、適した方法は異なります。大切なのは、5つの方法をすべて使うことではありません。

自分の入力作業に必要な方法だけを選ぶことです。

また、すべてを完全自動化する必要もありません。

人の役割を、

「入力する」から「確認する」へ変える。

それだけでも、毎日の面倒な作業を減らせる可能性があります。

まずは今日手入力した仕事を1つ選び、

「このデータは、すでにどこかに存在していないか?」

と確認するところから始めてみてください。